ARTICLE 02
インフレ・実質賃金と
FIRE必要資産
FIREの計画では「いくら貯めればよいか(必要資産)」がよく語られますが、その金額は物価が変わらないという暗黙の前提に立っていることが少なくありません。日本でも2022年以降は明確な物価上昇が続いており、インフレを織り込むかどうかで計画は大きく変わります。ここでは総務省の公式データから、近年のインフレの大きさを確認します。
近年の消費者物価指数(CPI)の推移
総務省「消費者物価指数(2020年基準)」によると、全国の総合指数(2020年=100)は次のように推移しています。2021年に99.8だった指数は、2025年には111.9まで上昇しました。これは2020年比でおよそ11.9%、2021年比ではおよそ12.1%の物価上昇に相当します。
| 年 | 総合指数 | 前年比 | コア指数* | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 99.8 | −0.2% | — | — |
| 2022年 | 102.3 | +2.5% | — | — |
| 2023年 | 105.6 | +3.2% | 105.2 | +3.1% |
| 2024年 | 108.5 | +2.7% | 107.9 | +2.5% |
| 2025年 | 111.9 | +3.2% | 111.2 | +3.1% |
* コア指数=生鮮食品を除く総合(生鮮食品は天候で大きく振れるため、物価の基調を見る指標として使われます)。「—」は本ガイドで取得した範囲に値がない年です。
「名目」と「実質」のちがい
物価が上がると、同じ金額で買えるモノの量(購買力)は減ります。たとえば総合指数が2021年の99.8から2025年の111.9へ上がったということは、2021年に100万円で買えていたものが、2025年にはおよそ112万円必要になったという関係を意味します(指数どおりに換算した場合)。
名目(額面)
通帳やグラフに表示される「そのままの金額」。インフレを考慮していません。
実質(購買力ベース)
物価上昇を割り引いた「今の価値に換算した金額」。FIREの生活費はこちらで考えるのが基本です。
実質賃金とFIRE必要資産
賃金が物価ほど上がらない局面では、手取りで見た生活の余裕(=実質賃金)は目減りします。実質賃金は厚生労働省「毎月勤労統計調査」で名目賃金をCPIで割り引いて算出されますが、近年は物価上昇に賃金が追いつかず実質賃金がマイナスになる月が続いたことが、たびたび報じられてきました。
FIREの「必要資産」を考えるとき、この物価上昇を前提に置くかどうかは重要です。仮に生活費を年300万円とすると、物価が年2%で上がり続ける前提では、20年後には同じ生活に年300万円ではなく、より多くの金額が必要になります。したがって、取り崩し計画は「将来の生活費がインフレでどれだけ増えるか」も合わせて考える必要があります。
ポイント:取り崩し中の資産も、運用利回りがインフレ率を下回れば実質的に目減りします。FIRE計画では「利回り」だけでなく「インフレ率」をセットで前提に置くことが、現実的な試算の出発点になります。
出典・データの根拠
- 総務省統計局「消費者物価指数(2020年基準)」全国・年平均(総合・生鮮食品を除く総合)。e-Stat統計表ID 0003427113。https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003427113
- 実質賃金の考え方:厚生労働省「毎月勤労統計調査」(名目賃金指数をCPIで実質化)。
- 前年比は本ガイドが公式の年平均指数から算出した値で、丸めの関係で公式公表値と末尾が異なる場合があります。
免責事項:本記事は公的統計に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・投資手法の推奨や勧誘を行うものではありません。掲載データは作成時点のもので、将来の物価・賃金・運用成果を保証するものではありません。シミュレーション結果は入力した前提に依存します。投資判断はご自身の責任で、必要に応じて専門家にご相談ください。